ちょっと旅に出た

目が覚めると、最寄り駅を1つ過ぎていた

このまま次降りるのも癪だし

どこか遠くに行こう

 

あまり行かない方面の電車は

ちょっと雰囲気が違った

 

赤かった空も黒くなり

車内は静かに揺れている

 

終点なのに降りる人はほとんどいない

冷たい風に身体を震わせ

帰りの電車を悴んだ手で調べる

 

辺りはパチンコ屋ばかりで

パチンコ屋の明かりばかり

 

みんなスーツ着て早歩き

何に急いでるのか

日々に埋もれてる人を眺めて

ちょっと優越感に浸った

 

遅くまでやってるお洒落なカフェに入ってみる

ちょっと奮発して

あまり好きじゃないコーヒーも飲んでみる

 

鞄から冷えきった単語帳を取り出して

明日の英語のテストを思い出す

暖かい部屋で上の空

ちょっと恥ずかしくなった

単語帳をまたしまった

 

意味もなくスマホを見つめる

コーヒーの写真撮っとけばよかった

でも1人の空間っぽくてなんか好き

 

そろそろ帰ろっか

 

さっきより冷え込んでる気がする

ポケットに手を突っ込んで

マフラーに顔を埋める

 

定期を取り出した手はまた悴んでて

ちょっと寂しくなった

 

早く帰りたいな

 

駅のホームは貸切で

電車の光を眺めてる

踏切の音を聞いて

ちょっと懐かしくなった

 

電車の端の椅子に座って

隣に鞄を置く

ちょっと足を伸ばしてみて

足元の暖房を感じる

 

車内は静かに揺れている

真っ黒な空は

真っ暗な外と隣り合わせ

 

そしてまた

ちょっと目を瞑った